−児童青年精神医学の新たな展開:リエゾンとレジリエンス−
第51回日本児童青年精神医学会総会 
会長 三國 雅彦
ご挨拶

日本児童青年精神医学会は1960年に設立され、今年で丸50周年を迎えることになり、昨年、この間の学会での研究の展開が児童思春期の主要な疾患ごとに明確にされ、それらの成果が本学会の発展の軌跡と一致していることに学会員各位は改めて同慶の念を篤くされたことと拝察致しております。そして、児童青年期の精神科医療に対する大きな期待に応えるべく、これからの25年、50年に向けた夢も膨らんできております。その第一歩を前橋学会で踏み出すことになり、テーマを児童青年精神医学の新たな展開―リエゾン(連携)とレジリエンス(復元力)としたいと考えております。児童精神病床を有する医療施設の先生方がコメディカルの方々と協働し、教育界や相談機関とも連携して、これまでも児童青年精神医学・医療の多くを担って来られていますが、昨年の学校保健法の改正に伴い、一層の教育界との連携強化が必須となり、また、大学病院や総合病院精神科においても小児科等と連携しながら児童青年精神医療ユニット病床を使ってリエゾン医療を実施しております。児童精神医学の発展が成人精神医学に果たした最大の功績は大人の精神科診断に発達障害との鑑別が必須となったことであり、生活史には発達史が必ず含まれるようになったことであります。その意味で、大人の精神医学・医療の担当者と児童青年期の精神医療の担当者との相互交流と連携も益々重要となってきております。
一方、近年の脳科学の発展は目覚ましく、胎生期や新生児期のストレス負荷や養育の質が及ぼす子どもの脳機能の発達への影響の分子機序と、それらの影響を修復する分子機序とが解明されつつあり、薬物療法のみならず精神療法的アプローチの可能性も検討されていて、レジリエンスの分子機序にも迫りつつあります。このような先進的な諸活動の情報を共有しながら、地道に地域で活動している多くの方々がそれぞれ抱えている困難な問題について語り合いつつ、その解決に向けて一層の専門性を高める学会にできれば幸いと考えてこのテーマを掲げる次第であります。
さて、医学生の相当数が児童精神科医を目指したいという希望を持って医学部で勉強しておりますが、実際に児童精神科医となる方はごくわずかであります。文部科学省の歴代の医学教育課長は「文科省としては喉から手が出るほどほしい」と言いますが、児童青年精神医学講座を一つとして作ってはくれません。医学生の意欲的な希望を実現するために、臨床経験を重ねられる医療の場の確保や指導医の育成が必須であり、医療経済の整備なくしては前進しようがありませんので、実現には相当の戦略的な取り組みが必要であります。一方、早期診断早期介入を実現していくためには、リスクの高い兆候を正確に把握し、予後を予測していくことが必須となりますので、客観的脳機能評価も踏まえた補助診断法の確立が必要であります。このように本学会が中心になって推進していくことが求められる多くの課題があります。その実現に少しでも役立つことができるような学会の開催を願っております。ご参加の先生方の熱心なご発表と参加者全員の活発な討議がこれを可能にしてくれるものと確信致しております。
この長い伝統のある本学会を群馬で開催させて頂くこととなり、感謝とともに緊張で身が引き締まる思いを致しております。この学会開催を機に、全国の、そして群馬の児童青年精神医学・医療の充実に結びつけることができるようにと、教室員と群馬の児童青年精神医療・福祉の関係者一同とが一丸となって準備を進めております。
群馬は有名な神社仏閣や名城も巨大なビル群もありませんが、人を癒してくれる人情と、温泉や豊かな自然に恵まれた地であります。学会員の皆様方を多数お迎え致したいと、心から願っておりますので、是非この第51回日本児童青年精神医学会にご参加くださいますようお願い申し上げます。